本作の真相 ・ 設定資料 [ 1 ]


本作の真相を設定資料を交えて公開しています
どうぞごゆっくりおたのしみください



※※ 注意 ※※

本ページは、「 本編のネタバレ 」を多く含みます。
本編ご視聴後の閲覧をおすすめいたします。







   め に


本作「雨宿り喫茶亭」はいかがでしたでしょうか。
一回の視聴で、キャラクターの台詞を全て聴き取ることができれば、大体の内容は合点が行くように構成しているのですが、
それはかなり難しいことで、特に中盤から終盤にかけての、ユズノが最終的に選ぼう(行おう)としていることを把握することが
困難だったように思います。

ボイスドラマの聴き方は、「さらっと聴きたい方」や「念入りに聴きたい方」など様々であると思いますので、
色々な方のバランスを考えて、今回はこのような作品構成となりました。
本編を聴いて、さらに真相が気になった方向けに、このページを公開しています。

大量の設定資料となり恐縮ですが、これもまた創作する者の性(さが)かなと思っています。
設定資料は今回、1~4ページ構成でして、各ページで重複した話はあまりしないように書いてますので、
このページを読んで深層(真相)が気になった方は、2ページ……3ページと深く潜って読み進めて頂けると嬉しいです。

毎回、制作にあたり
資料・文献はある程度 参考にしてますが、専門家の方々から見れば知識不足・稚拙な点もあり申し訳ありません。
私だったら「~~な風にはしない、~~な風にするだろう」という考えが浮かんだのならば、
それは、正解や不正解の無い、皆様 独自の目線であり、独自の色であると私は思います。
本作を受けて、また全く新しい形での皆様の作品創りの一助になればいいなと思います。

つたない部分も沢山ある中、CVの皆様、そして使用させて頂いた音楽・効果音・機材・制作ソフトのご提供者様、
そして、スタッフに救われました。

最後までお聴き頂いた皆様も、本当に有難うございました。
(諸星ユキヒト)


  ズノがラストで選択した人生、ユズノのこれからは……?


本編をさらっと聴き終えると、「あれ? なんか……ユズノとイツキは、最後 幸せそうでよかったな~」
で、終わった感じを受けると思います。
本編の終盤で、イツキやナナセがユズノに問いかけていましたが、ユズノにとって本当にこれで良かったのか、という点については
賛否あると思います。私個人的には「ちょっとまずいのではないか……」と思います。

ユズノが世界の理(ことわり)で結んだ契約の内容(ユズノが選択した人生)がかなり残酷ですし、
(※詳しくは、設定資料 【 2 】 と 【 3 】 をご参照ください)
簡単に言えば、イツキを視聴者様の「家族」に置き換えて、自分の家族が余命幾許も無い、となった時に
自分の今後の人生を分け与えることができるのか、ということですから。「それはできない!」という意見もあると思います。

 

ユズノは、イツキと生き別れる人生を何周もしてきた「彼女」の精神が宿る女の子です。
その為か、14歳という年齢ではありますが、大人っぽく、達観しており
独特な雰囲気を持つ子です。少なからず「彼女」の影響をその身に受けている故であると思います。

★ユズノが生きる社会は、2130年の日本。前作:「ルナティックの盤面」からつながっている社会です。
本編では、ユズノはクラスメイトと言い争い(または一方的に何かを言われて)
走って逃げているシーンからスタートします。
この言い争いは、とある社会背景により、ユズノが誰かをかばい、クラスで孤立していたことにより
起こったことです。
(※詳しくは、設定資料 【 3 】 をご参照ください)

  

ユズノは、「自分はこの選択が幸せだ」と自ら判断して、今後の人生を歩むことになります。
勿論、”彼女”からユズノ自身の未来を見せられなければ、死の世界でイツキと出会わなければ
その選択の機会すら無かったと思います。

ユズノの「選択」については、イツキとナナセは「反対」です。
イツキについては、ユズノから「この選択について後悔は無い」と言い切られた以上、
これからの余生、全力でユズノを幸せにしようと思うでしょうし、

ナナセに至っては、「ユズノとイツキの子供」ですので、ユズノがイツキと共に歩む人生を否定すれば
ナナセ自身の存在が消えると分かっていてなお、否定しているわけですから。
彼自身は今後も悶々とした思いが拭えないと思います。

ラストでは、「世界の外の奴ら」と言う得体の知れない力が、湖を割り、(この世界線の)ユズノを殺そうとします。
(※詳しくは、設定資料 【 2 】 と 【 3 】 をご参照ください)

(※以降、「世界の外の奴ら」を”世界の外”と表記します)

ナナセは、あの場面で「ユズノを助けない」行動をとることも可能でしたが、彼は ユズノを助けます。
本編中では冷淡さ(物事の行く末を冷ややかに見つめる様)を感じますが、
ラストでは情に厚い彼の一面も垣間見えます。
ここまで想われる(慕われる)ということは、ユズノとイツキが築いた家庭は、ナナセにとって温かく幸せだったのではないかと
推察できます。

 

ユズノとナナセについては、前作:「ルナティックの盤面」でも、ご出演いただいたキャスト様に
ご依頼をさせて頂きました。
前作でご担当頂いたキャラクターの関係性や、本作での関係性をあらためて考えると
前作を視聴頂いた方は非常に感慨深くなるのではないかと思います。

―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
ラストで、イツキやナナセが、ユズノを「貴女(あなた)」と呼ぶシーンがあるのですが、
個人的に好きなシーンです。
キャスト様のお芝居あってこそですが、各キャラクターのユズノに対する感情が見えるような気がします。
私は日本人ですが、日本語は文字として「読んでも」、声で「呼んでも」、美しい言葉が沢山あるように思います。
勿論、他の言語もですが。
本編の編集を終えてみて、改めて下の相関図を見ると、他キャラクターもそうですが
特に”彼女”とイツキについては、見た目の年齢20歳としていますが、
彼らが抱える背景を鑑みると、もう少し上に見える気がします。
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―

▼ キャスト様への事前配布資料 : 人物相関図




  行世界がある、ということは、今後のキャラクター達の人生も多様となる


  

ユズノが訪れた際、山奥にあるにもかかわらず賑わっていた「雨宿り喫茶亭」(「喫茶:雨宿り亭」)……。
この喫茶店を始めたのは、イツキとカエデです。
スタッフとして、カエデ(オーナーと言う立ち位置ですが)やアスカ、ミホを招いた(導いた)のは神様であった頃のイツキです。

カエデはイツキの正体を知っていますが、アスカやミホは知りません。
勘の良いアスカは死の世界を調べる過程でイツキの正体に勘づいていたようですが。

雨宿り亭は、死者の休憩所・待合所です。訪れる人が「極端に」多くなる「曜日」もあればそうでない日もあります。
その為、日によって開店時間もまちまちです。”繁盛しない方がいい”喫茶店です。

カエデ達は死の世界に留まってはいますが、本編では、望めばまた自分の人生を新しくやり直すことが可能な状況です。
ラストで、医者であるカエデと看護師のヒナコは、イツキとユズノの前に登場します。
カエデはイツキに近づいて、「大事にしろよ」と、「ユズノを大事にしろよ」と言って
ヒナコと共に病室を後にします。

雨宿り亭で、「どこかで(お前と)会ったことがあるか?」とユズノに尋ねたアスカは、
ラスト、もう一度美容室で、20歳になったユズノに同じ質問をします。
ユズノはごまかしますが、時系列を考えるとまた発見があり、おもしろいと思います。

転生をしても前世の記憶を引き継げるのか、というのは人それぞれ。
ナナセは「全部 覚えている」と言っていましたが、ほとんどの人は忘れてしまうと思います。(忘れてしまった方が良いこともあると思いますし)
次の人生、また人として生まれるかどうか、についても(大抵は人だと思いますが)確定的ではありません。
ですので、アスカとミホが人同士で出会う世界線もあると思います。

  

ラストでは、イツキとユズノの「"僕"と"私"の秘密」というセリフで本編が締め括られます。
ユズノとイツキを知っている者(ナナセやカエデ)はいますが、
ユズノとイツキは、この人生が「最期」。
他の生物と同じように「転生」はできない。この人生を生きて、消滅。

二人の総じた人生を私なりに称えて、二人の「秘密」、としました。


▼ キャスト様への事前配布資料 : 並行世界のしくみ




  「無から有を生み出すことは、我々にとっては罪とされている。
    その罪を贖うためには、
    相応の”代償”を払わなければならない」


本編の終盤では、ナナセがこの世界(ストーリー)の核心を話します。

「命の循環は、この世界の循環そのもの。
生物は、転生を繰り返すことが義務とされ、
この世で生きる者は皆、その増えも減りもしない総寿命を取り合い、生きている」

「発展の裏に衰退があり、延命の裏に犠牲がある。
常に”ゼロ”となるように。
それがこの世界の理屈であり、
もっと言えば、”この
世界の外”が定めたルールだ」

イツキは、神様の座を降りて、人の世界で生きようとしますが
人間となったイツキはどの世界線でも「短命」でした。だから、ユズノと生きようと思っても
共に長く在ることができませんでした。

イツキは神様であったのなら、人一人くらい創るのは簡単だったのではないか?
と言う疑問については、上のような「総寿命」が決まっている世界において、
イツキという、新しく作られた人間が割り込む余地がほとんどなかった(短命の人間を創ることが精一杯だった)というのが
答えになります。

恐ろしいのは、総人口が増えても「総寿命」は増えない、ことがこの世界のルールとされていることです。
そこには発展も無く、上手いこと術を考えなければ長期的に見て衰退するしかない。
「何をやってもゼロだ」と言っていたナナセは、”世界の外”が定めたこのルールを
心底苛立たしく思っていました。
彼が過去をさかのぼり、ユズノの前に現れてまで説得したい(抗いたい)原動となった事柄です。

  

イツキと”彼女”は、元は人間ではありません。
地球外からやってきた、”地球を創造した者達”です。地球を創造できるのですから、大きな力を持っていると言えます。

”世界の外”から見れば、イツキや”彼女”、もっと言えば”彼女”の生まれ変わりのような存在であるユズノと
イツキが一緒になることは「脅威」です。
これ以上の創造も発展もしてほしくない、と言うのが”世界の外”の本心です。

この理不尽極まりない本心が、上の「ルール」やイツキや”彼女”が背負ってきた「代償」、そして、
ユズノが世界の理(ことわり)という場所で”世界の外”と結んだ「契約」に滲み出ています。


▼ キャスト様への事前配布資料 : ★人と世界のしくみ




私の持論ですが、法律(ルール)や代償、契約と言うのは、
それがある一定数または広範囲に影響が及び、双方どちらも優位を取れる立場ではないものと捉えるのならば、
双方において「納得のいくこと」「平等であること」が不可欠であり、
「同じ土俵でやりとりされなければならないもの」であると思っています。

本作品の総評は置いておいて、
上のような「ルール・代償」であったり、「並行世界」や「世界の外」と言うのは、取り上げるに興味深い題材であると思います。
特に「世界の外」の正体については、他作品でも「地球外の知的生命体」などの抽象的な存在として度々取り上げられますが
明確に言及されることはほとんど無いと思います。(おそらく)誰もその正体にふれたことがないので。

実物を見たことが無い以上、証明もできず、フィクションとなってしまうのですが
私の頭の中の想像に終始しつつも、
その正体に言及できるような何かを、作品上か……どこかで出せたらいいなと思っています。








                                 ▲ TOPへ戻る / ▶ 設定資料 【 2 】 へ



Copyright 2022 ボイスドラマ制作サークル「夜と黒猫」