* * * * * 「 始 ま り 」 * * * * *



両親が 死んだ。



何かを伝えるために自分たち5人をここへ呼び寄せたのか。
死ぬ前に ただ一目 会いたかったのか。
今ではもう、問うことができない。

彼らはベッドの上で手を組み、二人並んで安らかに眠っていた。
死ぬにはまだ若かった。

両親を囲むように、俺たちは その場に立ち尽くしていた。

***は泣きだし、

***は彼女をなだめ、

**は目を伏せて何かを考えているようだった。

俺と***は
彼らの最期を目に焼き付けるように、その視線を留めていた。

「大の男がこれだけいたのに、守ることすらできなかったなんて……
笑えるよね」
俺の隣で、***がぽつりと言った。

「その言い方やめてくれない?」
***の肩を抱いていた***は睨む。

「じゃあこの状況をどう説明するんだよ。他殺でもない自殺でも無ければ
自然に死んだって言うのかよ。2人で一緒に? ……理解できない」

何が起こっているのか、皆 わからなかった。
その兆候すら感じさせない位、俺たち家族は本当に幸せだったからだ。
両親が重篤な病気を抱えていたとも思えなかった。

「……手紙が……ある」

涙声の***がベッド脇にある棚の上を指さした。

手紙には、言葉少なな
両親それぞれの想いが綴られていた。



あの牢獄と同じだ。



幸せはいつだって、束の間。檻の中。
何度 時を巡らせようと抜け出すことができない。

運命か。宿命か。
身体に纏わりつくそれらを、打ち砕きたかった。


「真実を……明らかにする必要がある」


***の言葉に、5人は顔を上げてお互いを見た。


静かだった。


静かな怒りが、胸の奥底で揺らめいて
ここから先ずっと、消えることは無かった。







   
 

     

 



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