本作の真相 ・ 設定資料 [ 3 ]  


後書きやキャラクターの真相を設定資料を交えて公開しています
どうぞごゆっくりおたのしみください



※※ 注意 ※※

本ページは、「 本編のネタバレ 」を多く含みます。
本編ご視聴後の閲覧をおすすめいたします。







▼  真相


脳科学者である時枝カズヒトは、政府から国家機密として任されていた、
冷凍保存技術で残されている ”過去の偉人達の脳 ”を他の個体へ移植し、彼らを
現代に蘇らせる研究を進めていた。

しかし研究の過程で、”故人の脳”を蘇らせたところで
それ以上の成果は生まれないと考えたカズヒトは、
クロキを研究助手として迎え入れ、裏で
優秀な者同士の脳を掛け合わせて ”新しい脳(人格)”を作ることを試みる。

そしてカズヒトは、自分と妻サヤカの遺伝子から2人の「人間」を作り出した。
その2人は”レイジ”と”トモエ”と名付けられ、彼らの脳の一部を
サヤカの脳へ移植したところ、実験は成功。

脳移植後のサヤカの脳内には3人の意識が共存できているだけではなく、
レイジとトモエが結託すれば、サヤカの思考を覗き、感覚を共有し、
行動を支配できることが分かった。

カズヒトは、この脳移植実験の成功を ”自分自身の偉業”と捉え、
いずれ政府から狙われる危険性を考え、
サヤカの脳を後世に残していくための手段を考えていた。
しかしその矢先、牢屋から抜け出したサヤカに殺されてしまう。

時枝邸の地下に幽閉されていたサヤカ・レイジ・トモエの3人は、
カズヒトの死を確認し、地下の研究施設に火を放った後、時枝邸を去る。

しばらくの間、サヤカ達3人はアパートを借りて住むことになるが、
サヤカは18歳でカズヒトに嫁いだため仕事を見つけることもままならず、
レイジとトモエは ”人間として登録”が無く、非常に生き難い状態だった。

加えて、政府はカズヒトの死を受け、任せていた研究が外部へ漏れることを危惧し
警察へ手を回し、カズヒトが裏で行っていた研究やその関係者を探し出し
消そうとしていた。

時枝邸の地下に6年もの間 幽閉されていたサヤカは、カズヒトの死により
ようやく自由になれたのだが、実際は
実験の後遺症で寿命が短く、政府にも狙われつづけており
家に引きこもり怯えて過ごすしかなかった。
そんなサヤカを傍で見ていたレイジとトモエは、サヤカの幸せについて
考えていた。

ある日、サヤカの提案で3人は車で”月の丘”へ向かうことになるが、
走行中、政府特務脳科学機関(GSB)の手により車を誤動作させられ、
サヤカ達の乗った車は崖下へ転落。
レイジとトモエはサヤカを身を挺して守り、彼女はほとんど無傷で済んだが、
レイジとトモエは頑丈にできているとはいえ かなりの深手を負った。

サヤカは病院へ搬送されることになったが、レイジとトモエは
通常の病院にかかれず、クロキとアンナの元へ身を隠すことになった。

この事故により、自分たちが何者かに狙われている事が明確になったため、
レイジとトモエは怪我が治るまでクロキ医院にいることになり、
サヤカとは意識をつないで彼女を見守っていた。

入院していたサヤカに、タケダ総合商社での仕事を紹介するニカイや
同僚のユリの存在――。
自分達がサヤカの前に出て行けば より不審がられ
目をつけられると考えた
レイジとトモエは、サヤカを通して彼女の周囲を探ることになった。

一方で、カズヒトから自分が万が一死んだ場合、サヤカ(の脳)を
他者へ引き継ぐための方法を教えられていたクロキは着々とその準備を
進めていた。

サヤカの本当の幸せとはおそらく、やりがいのある仕事をしながら
ニカイやユリ達と笑い合っている日常なのだろう――。
レイジとトモエは、サヤカの視覚や思考を通してそう感じていた。

彼らは寿命が長くはないサヤカに一時の幸せを感じてもらいたいと、
自動車事故以前の彼女の記憶を制御し、封じていた。

しかしサヤカの状態は日に日に悪くなり、彼女の感じる痛みは全て
トモエが引き受けてはいたが、サヤカ自体、
足元がふらつき頭が重く感じるようになり、
レイジとトモエが恐れていた”その時(死)”が近づきつつあった。

本編から数年後、サヤカ・レイジ・トモエはGSBを裏切っていたミギワが
用意をしてくれていた隠れ家に住むことになった。

クロキの治療により少しは回復をしたサヤカだったが、数か月後には亡くなってしまう。

一方でレイジとトモエの間には ”アリス”が生まれており、
彼女の脳が発達するのを待って、クロキはカズヒトの教えの通り
”サヤカの脳 ”をアリスに全移植する手術を成功させた。

これにより”サヤカの脳”というカズヒトの研究成果は、他者(アリス)へ引き継ぐことが
できたのだが、アリスはレイジとトモエという”近親者の間でできた子供”であり、
アリスもまた短命で歩行不全などの障害が出てくるようになっていた……。

しかしレイジやトモエにとって一番大事なサヤカは死に、
彼らがサヤカの次に大事なものはやはり、
サヤカの記憶や意識が残る”サヤカの脳そのもの”だった。

彼らはたとえアリスが亡くなったとしても、また次のアリスを作り
サヤカの脳を全移植していく……。

これが、レイジ達が本意ではないながら実行していかなければいけない方法であり、
カズヒトが行いたかった最後の手段だった。

レイジとトモエは、自分達の死は望んでいない。
今はサヤカが眠っている状態にある”アリス”の安全を守るため、
そして、自分達が恨んでいる政府を壊滅させるため、
彼らは隠れ家を後にする――。



▼  用語集


◆ 政府特務脳科学機関(せいふとくむのうかがくきかん)

通称:GSB(ジー・エス・ビー)
「人間の超進化」、「万能な人間の永続」、「過去の英知(偉人)の復活」を
目的とした研究機関

表向きは、国が運営する”先進医療の研究機関”だが、
海外資金の流入や政治関係者も関与がある。

人体移植・特殊投薬による、人間の成長過程の短縮……
万能な人間同士の交配……
冷凍保存されている偉人の脳を他の人体に丸ごと移植し、
その脳が持つ人格の復活……など
おおよそ世間には出せない研究を秘密裏に行う機関。

この機関では、冷凍保存していた過去の研究者や政治家たちを蘇らせ、
国の中枢へ送り込む計画を実行しようとしており、
カズヒトはこの研究機関の研究員だった。

ミギワとユリは、この機関から”遺伝子操作”によって生み出された人間。
合法的に生まれたわけではないミギワ達は、この機関の派遣員として
研究員の監視や他の任務に就いていた。
→ この機関の上層部は、有望だったミギワを、国民からの知名度を上げたのち
政界進出をさせようと考えていた。


◆ 時枝邸(ときえだてい)

時枝夫妻と使用人が住んでいた。
周りには住宅地がほとんどない、名原(造語)にある山奥の大邸宅。

2年前に起きた事件により、一夜の内に全焼となった。

現在は更地とされているが、時折誰かが調査に訪れている
痕跡がある。(足跡が多く残されている)

シイナの調査では、時枝邸の見取り図には、地下室があることが分かったが
入り口などの痕跡は見当たらなかった。
(地下室の痕跡はシイナ達が訪れる前に調査に訪れたGSBによって消された)


◆ 時枝邸 変死体事件(ときえだてい へんしたいじけん)

2X12年11月10日、時枝邸で起きた事件。
深夜0時過ぎ、使用人(アンナ)の通報により警察と消防がかけつけると、
既に時枝邸は火の手に包まれていた。
時枝サヤカと使用人は逃げ出して無事だったが、焼け跡から
時枝カズヒトの遺体が見つかった。

カズヒトの死因は焼死ではなく、頭を鋭い刃物のようなもので
滅多刺しにされたことによるショック死だった。

不可解な事に、警察は早期に内部犯の線は薄いと判断し、
外部犯による放火・強盗事件として捜査を進めていたが、
それも1年前には打ち切られている。(政府からの圧力があった)


◆ 時枝家親族 失踪事件(ときえだけしんぞく しっそうじけん)

時枝邸事件以前に、時枝カズヒト・サヤカの親族が複数人失踪し、
後に遺体となって発見されている。

遺体の内、複数人は脳に欠損が見られ、
男性2人と女性1人は、人体の一部が欠損した状態で発見されている。


◆ 鶴崎峠(つるさきとうげ)

千葉県にある。峠の先には見晴台がある。
9ヶ月前に、サヤカはこの峠で自動車事故を起こしている。


◆ 鶴崎峠 自動車転落事故(つるさきとうげ じどうしゃてんらくじこ)

2X14年1月15日、サヤカが起こした自動車事故。
運転操作ミスにより、車ごと崖下に転落する大事故だったが、
運転をしていたサヤカは奇跡的に軽傷だった。

救助された際、運転席にはサヤカ1人しか乗っていなかったが、
同乗者がいた痕跡があった。

サヤカは警察から聴取を受けるも、事故のショックなのか
彼女には事故以前の記憶が一切無かった。

ただ、記憶障害はあるが日常生活には支障ないと判断され、
この事故についても事件捜査には至っていない。


◆ 月の丘(つきのおか、別名:しあわせの丘)

鶴崎峠の先にある見晴台。
冬の夜に行くと、大海に浮かぶ美しい月を見ることができる。

たどり着くまでが悪路のため、観光名所とまではされていない。


◆ タケダ総合商社(たけだそうごうしょうしゃ、短縮:タケダ社、タケダ)

サヤカが勤めている会社。
大型農機具メーカーの機械・部品を販売している。



ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
2021. 1.13  諸星 ユキヒト







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